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なぜ「筋トレ」しても足は上がらないのか?Y字バランスを叶える「力学」の秘密

こんにちは。
最近は偶然でしょうか?

「片足立ちを安定させたい」
「足を高く上げたい」
「足を上げた状態でバランスを保ちたい」

というニーズを頂く事が続きました。

その方々にお話を聞くと、ほぼ全ての方が「筋力」「柔軟性」を改善しなくてはいけないと思っていらっしゃいました。

もちろん、それらは大切です。
ですが…その前に

「力学」で考える事が優先になります。

というのも、いくら「筋力」「柔軟性」があっても、「力学」的に不可能な動きはどうあがいても出来ません。
言い方を変えると、万有引力に筋力で勝てるわけがない、という事です。

では、脚を上げる時に必要な「力学」を紹介します。

◆Y字バランスの力学

皆さんは「片足で立ち、足を高く上げるポーズ」と言うと「Y字バランス」をイメージする方が多いのではないでしょうか?

確かに、片足立ちの力学を説明するのに「Y字バランス」はとても分かりやすいです。
では、下にY字バランスのイラストを描いてみましょう。

Y字バランスのイラスト

「あれっ!?何か違和感があるけど…なんだろう?」

と思った方は鋭いです。トレーナー向いてます(笑)
逆に、全く違和感を感じない方はトレーナーは向いていないかもしれません(笑)

実は人間の身体…だけでなく、物体は重心位置が「支持基底面」の範囲内に落ちない場合「回転モーメント」が発生します。
人間で言うと、それは「転倒する力」が生まれるという事です。

分かりやすい言葉を使うと

立ってる時に身体が静止する為には必ず「重心線は両足(片足)の範囲内にある」と言う事です。

範囲内から離れると転倒する力が生まれるので、転ぶか「けんけん」して足の方を重心位置にあわせる戦略(専門的にはステッピング戦略と言う)を取ります。

ステッピング戦略の解説

重心位置を正確に測定する場合は、「前腕」「上腕」「胸部」など各パーツの質量を測定し、すべて合成して「総合重心点」を求めます。
ただし、現場でそんな事は出来ません。歩いている人の重心を求めるのにいちいち計算していたら大変ですよね。

以下は「重心」「重心の求め方」について、奥川が解説した動画です。

そこで、理学療法士やトレーナーがよく使う推測方法があります。
上半身の質量中心点(胸椎7番付近)と下半身の質量中心点(左右大腿部の下から3分の2中間)、この2点を結ぶ仮想線の中央を「身体総合重心点」と推測します。

身体総合重心点の推測

この方法で考えると、先ほどのY字バランスのイラストでは重心から落ちる垂線が支持基底面(この場合は片足なので支えている足)から外れています。

支持基底面から外れた重心

つまり、そのままでは転倒するはずの姿勢になります。
違和感があった方は力学に詳しいか、もしくは「勘」で気づいたのでしょう。

では、実際に支持基底面内に重心を保てるY字バランスはどうなるのか?
それが、下のような形になります。

正しいY字バランスの重心

では、リアルなY字バランスをしているダンサーの写真などで確認してみましょう。

ダンサーのY字バランス1
ダンサーのY字バランス2

なっていますね。そりゃそうですよね(笑)

このように考えると、冒頭でお話した「筋力」「柔軟性」は「力学」に勝てないという意味や、優先順位として「力学的に実施出来るか?」を考えるべきという理由が分かっていただけたと思います。

ここは、一般の方にはあまりうまく伝わっていない部分です。
これは、トレーナーなど運動指導者の努力不足や理解不足…というよりも、そもそも教育の問題でもあります。

生物の力学は「生体力学(バイオメカニクス)」と呼ばれ、理学療法士や作業療法士、トレーナーなどの専門学校では必須科目として学びます。
しかし、一般のインストラクター、鍼灸師、按摩指圧マッサージ師、整体師の学校では十分に扱われていないケースも多いです。

もちろん、ダンススクールやヨガスタジオの先生でも知らない方は少なくありません。
むしろ、知っている方は独学で学ばれている素晴らしい先生だと思います。

◆重心移動以外にも体幹の能力も重要

Y字バランスのイラストを見ると分かる通り、体幹を横に曲げる「側屈」という動きで、重心を移動させ、バランスを取っています。
(参考文献:ダンサーズヘルスケアブック 大修館書店)

体幹の側屈

つまり、股関節の可動性だけでなく体幹の側屈能力も必要になります。

この体幹の側屈は、実は歩行時の片足立ちでも自然に行われています。

引用:
運動分析臨床活用講座 石井慎一郎著 メディカルヴュウ社
運動の繋がりから導く 姿勢と歩行の理学療法 千葉慎一著 文光堂

歩行時の体幹側屈1
歩行時の体幹側屈2

もちろん、Y字バランスほど大きな動きではありませんが…
「えっ!?そんな事やってる意識ないけど」と思うのも当然です。

これは半分くらい「反射・反応」で行われる姿勢制御だからです。
つまり無意識で行われています。

例えば、電車の中で急に揺れた時、大きな揺れでなければ無意識にバランスを取っていると思います。
その時、身体は揺れた側と反対方向に体幹を伸ばすようにしてバランスを取っています。

引用:理学療法テクニック 発達的アプローチ 中村著

電車での姿勢制御

これが、健康な人の姿勢制御です。
(※体幹機能が低下している方やバランス能力が低い方はこの反応がうまく働きません)

そして、その延長線上にあるのがY字バランス時の体幹側屈です。

つまり、まず重要なのは「歩行」という基本動作が正しく出来ていること
さらに言えば、そのベースとなる「姿勢」が整っていること

そして施術前に確認している「前屈・後屈・側屈・回旋」といった動きが正しく行えていること。
これらが非常に重要になります。

■今回のまとめ

  • 足が上がらない原因は「筋力・柔軟性」だけではない
  • まず優先すべきは「力学(バイオメカニクス)」の理解
  • 重心が支持基底面から外れると、必ず転倒モーメントが発生する
  • つまり、力学的に成立しない姿勢は筋力ではカバーできない
  • Y字バランスでは
    → 足を上げるだけでは重心は支持基底面外にズレる
    → 体幹の側屈で重心を支持基底面内に戻す必要がある
  • 身体の重心は
    → 上半身(胸椎7番付近)と
    → 下半身(大腿部)の質量中心から推測できる
  • 体幹の側屈は
    → 特別な動きではなく
    → 歩行や日常動作でも無意識に行われている
  • 姿勢制御の多くは
    → 反射・反応による「無意識の動き」
  • Y字バランスは
    → 日常の姿勢制御の延長線上にある動き
  • パフォーマンス向上のためには
    → 筋トレやストレッチの前に
    → 「重心移動」と「姿勢制御」の理解が重要
  • 最終的に重要なのは
    → 正しい姿勢
    → 正しい歩行
    → 前屈・後屈・側屈・回旋といった基本動作の質

■次回予告

次回は実践編としてY字バランス…は、難し過ぎるのと日常生活の場では余り使わない動きなので(笑)

重心移動だけでなく、下半身の強化と体幹トレーニングとして最高のエクササイズ!

「四股」

の正しい実践方法とコツを皆さんにお伝えしたいと思います!

四股のイラスト

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